この住宅は石引の段丘地形に建っている。もともと犀川側(西側)の境界に沿って3mの高さを持つ擁壁を立てて平地とし、平屋建ての住宅が建っていた。その擁壁は古いコンクリートで数カ所に大きな亀裂が入り、住宅の建て替えに際し新しく造り直すように義務づけられていた。擁壁の造り直しに800万円が必要であった。単に以前と同様の平地にするのではなく、10坪分のスペースを地下にまわし、擁壁が建物の外壁を兼ねるようにした。10坪分の内部仕上げと中庭のスペースを含めて地下部分の建設コストは1100万円となり、有効に予算を使えることになった。
この考えを起点として地下の中庭、1階の広い庭、2階のデッキテラスの3層の外部スペースを設けている。各層は内外一体となって異なった眺めと雰囲気をつくり出している。地下は喧噪から隔てられた静けさを持ち、1階は大きな開口と格子を通して周囲の緑や街の気配まで感じられる開放的な空間となり、2階からは大空と市内が一望できる。さらに雛壇状の外部構成と内部の吹抜けによって各層相互に気配を感じとることができる。
石引の段丘地形という敷地の特徴を生かしながら、街並み、外部、内部がゆるやかにつながる居住空間をつくり出している。