計画地の野々市市横宮町は近隣商業地域で 地区内の道路に沿って店舗系の建物が多く並んでいます。しかし地区外の道路を挟んで隣接する向かいは 木造家屋の並ぶ住宅地です。これら二つの異なる性格の道路に面した角地に計画した住宅です。
西側の道路に面しては 店舗系の連続したファサードを構成できるように 白いリシン吹付の大きな外壁面をつくり 南側の道路に面しては 木造住宅と向かい合うのに相応しい低層の杉羽目板張りの外壁としています。閑静な住宅街とは異なり 不特定の車が通る場所であるため 居間の南側は道路に面して高さ2.7m の壁で閉じ 北側にプライベートな広い庭を設けています。また、居間の南側壁面の上にトップサイドの連続する窓を設けて冬季の採光を確保しています。
建物構造は県産杉材で構成され それらの構造が内部デザインとして表現されています。
特に1 階天井に現れる60×270 の根太( 垂木) は1 尺5 寸間隔に並べられて くの字型の空間を同じモチーフでひと繋がりの空間に見せています。くの字型プランの折れ曲がり箇所が吹き抜けになり 木構造が上階に伸びて 1 階食堂から2 階子供室へと空間が繋がっています。
子供室天井には 勾配屋根を支える湾曲した杉丸太が見えています。居間南面のトップサイド窓を 梁より外側に1 尺離して なおかつ高くすることで 天井高さに制限されることなく光が室内に広がっています。窓の取り付け方は 常に構造フレームを分かりやすく見せるように考えられています。
木軸構造を整理することで 構造材が空間の分節を表現したり 空間の雰囲気を醸し出しています。化粧木材を多く用いてはいませんが 構造材の見せ方だけで 木質空間を十分に感じることができます。県産材を面材として使うよりは 柱・梁・根太等の立体的な塊として使用し 表現する方が 県産材をより魅力的に感じ 伝えることができます。