「のだの里」は小規模多機能型居宅介護付きの小規模特別養護老人ホームで 2つの施設が複合したものです。設計する上で心掛けたことは大きく3つあります。
1. 開かれた老人ホームをつくる
各ユニットのリビングが各々2つの交差点に面していて 横長のガラス窓を通して 山の風景と街の様子を見ることが出来ます。逆に街の人からもホーム内の様子や お年寄りの姿を垣間見ることができます。このホームではお年寄りや職員の方と 街で暮らす人達とが互いに意識をしながら暮らして欲しいと思っています。
2. 施設ではなくホーム つまり住宅をつくる
広さやスケール感 雰囲気 建築部材の寸法 施工方法など 私が戸建住宅を設計する時と同じ考え 密度で進めました。介護そのものも 施設でしているというよりは 住宅の中で行っているという感覚のものになると期待しています。
3. 天然の木材を多く使う
日本人の暮らしは木の中で培われてきました。建物の内装には 杉 桧 ヒバ カエデ センといった木材が使われています。ここに入所される方のほとんどは 日本の伝統的な家屋の中で成長されたと思います。木の温もりや手触りは 住まいには欠かせないものです。
根本は建築を通して 社会に貢献し 暮らしやすい環境を目指すことです。病気の治療や介護の仕事にはより良い生活をして頂きたい という専門家としての志しがあり 社会的意義があります。微力ですが建築も同じだと思います。人の生活は複雑ですから ひとつのことが良ければ満足ということではありません。いろいろな事柄が重なり合って人の心に触れたり 人生を少し後押し出来たりすると思います。建築もそのひとつであってほしいと思います。