「金沢弁護士会館(仮称)」建設に関する提案
新しい金沢弁護士会館の姿
①「厳格さと温かさ」「品格と安らぎ」を備えた金沢弁護士会館
②「開かれた活動」 「開かれた場」を提供する金沢弁護士会館
③ 裁判所と拮抗・共鳴し新しい景観を創出する金沢弁護士会館
④ 自然を取り込んで成長する環境負荷の少ない金沢弁護士会館
⑤ 普遍性と個性を備え世代を超えて継承される金沢弁護士会館
金沢弁護士会館の5つの姿を具体的な建築として実現するため、以下の設計提案を行なう。
□植物の絡まる緑の庇(グリーンヒサシ)で敷地を覆う。
建築によって切り取られた場は周囲から独立したidentityを持つことで、周囲との新たな関わりを創り出す。このことがまず最初の建築行為と言える。建ぺい率60%の建物の外周をグリーンヒサシで覆う。裁判所の大きなヴォリュームと比較すると小さな建物であるが、敷地の90%を覆うグリーンヒサシによって独自の存在感を主張し、ガラス張りの連続スチールマリオンの裁判所との間に新しい緊張感を創り出す。またヒサシに植物が絡まることで窓、外壁に木漏れ日の和らいだ光を届け、同時に日射の照り返しや蓄熱を減らし、敷地全体のクーリングに役立つ。四季折々に、そして経年と共に成長と変化を見せ、周囲の景観に馴染んで行く。
□壁面・軒先を隣地建物と揃えて街並みに参加する。
建物を街路に近づけて配置し、弁護士会館が街並みの連続の一部となるようにする。10台分の駐車スペースを街路と建物との間に設けると、建物は街路から少なくて15mバックすることになる。駐車スペースとして北側に屋内駐車場(8台分)を設け、街路に沿っては6m巾のスペースに限定し 車寄せ、短時間の駐車と数台の駐車場のみとする。2mの2階床のはね出しと3mのグリーンヒサシによって会館は街路まで近づく。
□大会議室を1階フロアに設ける。
弁護士会館の諸室の中で、一般の人(例えば弁護士に相談する問題を抱えていない人)が最も利用できるのが大会議室である。金沢市内の他施設の大会議室(例えば歌劇座2階大集会室、ITビジネスプラザ武蔵6階交流室、近江町市場4階まなびぃ広場等)は上階にあるため日常的な場所に成りにくい。大会議室を一階フロアに設けることで、街路からフラットにつながり、入りやすい会場となる。他団体の集会、講演会、パーティーへの貸出し等、一般の利用を促して日常の中で弁護士会館の認知を高める。物品、備品の搬入や、ケイタリングは駐車場から直接可能で、より利便性の高いスペースとなっている。また弁護士会の集会、イベントでも活動が市民から見えやすく、一般の参加を導きやすい。アプローチからエントランスホール、ロビー、大会議室へと床仕上げを統一し、ひとつのプラットホームとして場所の力を持たせる。
□弁護士会を2,3階フロアに、司法支援センターを2階フロアに設ける。
1階フロアに大会議室を設けることで、弁護士会と司法支援センターの受付、事務室は2階フロアに配置される。それにより、1階フロアのエントランスはオープンで、スッキリとした入りやすい空間となる。エントランスから2階フロアへとスムーズに導くことが重要となるため、上部から自然光の差し込む幅広の2つの直通階段を設ける。エントランスから真っ直ぐに階段を上ると、自然光で明るい光廊下へとつながる。弁護士会と司法支援センターを2階フロアに配置するメリットも十分に考えられる。外来者にとっては、「入りやすそう!でも入ったらプライバシーが守られ、それでいて明るくて外を感じる快適な会館!」 会員にとっては、「2階に上ると喧騒から離れてホッと一息つける。心を静めて相談者の話に集中!」そんな空間を創り出す。
□光廊下を中心にフレキシブルに二つのゾーンを分割または接続する。
巾3~5mの光廊下の中央に可動のスクリーンを設置する。スクリーンで分割した時は2本の片側廊下ができる。ひとつは弁護士会ゾーンの廊下、ひとつは司法支援センターゾーンの廊下として使用する。二つのゾーンに分けない時は巾の広い中廊下となる。この光廊下へは、北側からの自然光がフロストガラスを通して柔らかく差し込み、明るくて温か味のある空間となる。廊下の突き当りの窓からは金沢城跡の森が四季を通じて眺望できる。また光廊下の延長上に、「撤去可能な壁」(可動間仕切壁でも良い)があり、弁護士会事務室と司法支援センター事務所を分割する。同様に1階のエントランスホールでも引込み可動スクリーンによってフレキシブルに二つのエントランスを分割、接続する。全ての居室が外側に面し通風・採光を確保出来ると共に、この光廊下によって内側からも通風・採光を得ることが出来る。施設全体に陰やよどみが少なく、快適な室内空間を創り、機械換気や照明器具の使用割合を減らし電力消費負荷の低減に役立つ。
以上の提案は、それぞれが複合的な意味と役割を持つ。それぞれがひとつの建築に統合される時、最初にあげた「新しい金沢弁護士会館の姿」が具体的に表現されると期待する。