建物のつながりに統一感

「デザインとは単なる飾りではなく生活そのもの。合理的な考えに裏打ちされたもの」

■□一つひとつの建物は個性をもって建つけれど、通りとしてはずっとつながるわけですから、建物を設計する上で、その“つながり”を強く意識して取り組むことが大切だと思います。つながりを持った通りが、それぞれ縦横にも交わり、そんな積み重ねによって全体として街がもっと楽しく、魅力ある場所に生まれ変わっていくのではないでしょうか。設計者としては、そこに至るための手掛り、方法をいろいろと考える必要があると思うのですが、残念ながらまだまだ意識された設計が少ないようです。今ある伝統的な街も何十年、何百年という永い年月の中で造られてきたわけで、堂々とした暮らしが築く街の中には、常につながりを意識した跡があり、とても魅力的です。これからの建物や街づくりにおいても同様、伝統的な街に学ぶ“つながり”に十分配慮していってほしいと思います。

■□建物が横につながる視点を、私は「開かれた形態」ととらえ、例えば三角、四角、丸の違った建物がバラバラに並んでいたとしても、建物と建物との間、空間につながりを意識した工夫があれば、全体としては統一感があって、とても良くなると思うのです。ただ気掛かりなのは、そんな工夫を単に『デザイン』と言って、飾り付け(装飾)の意味合い、感覚云々で理解する向きが多いのは大変残念なことです。正しい理解を願って言えば、都市デザインや建築デザインの中で使う『デザイン』とは、生活そのもの(人間と社会の生存に根ざしたもの)を意味し、それは単なる感性とは違うもっと合理的な側面をもち、ちゃんとした理論に裏打ちされた考え方のことを指すのです。

■□そもそも伝統的な都市とは、意外に曖昧な造られ方をしており実は、その曖昧さの中にこそ、建築的な合理性があり、方法があるのです。一つに固定されたものではなく、常に新しいものを取り込んでいく余裕みたいな仕掛けがあるということです。伝統的な街にいくと、なぜか心がワクワクするのは、そのためではないでしょうか。