第2回JIAいしかわ建築大賞2009

受賞コメント

今回、公開審査を経て投票が行われ、大賞として選出されたことは、たいへん光栄なことです。また、市民賞にも同時受賞できたことは、これからの活動の励みになります。建築デザインは、建築家個人の恣意的側面も含んでいますが、その多くは至って社会的、文化的であり、我々の生き方、つまり、共に生きる姿に深く関わるものです。本賞の選考プロセスの公開を通して、多くの人に理解いただける機会となることを願っています。

ふたつの住棟を渡り廊下でつないだ二世帯住宅です。親世帯、子世帯の好みに合わせた二つの住宅が、材料、形態、色調によって対比されながらも、適度にとられた外部スペースの間合いと、室内を見通しながら、庭から庭へとつながる場面の連続によって「緩やかな全体性」を確保しています。

小さな農機具小屋に愛着を持つ父親の感性が この設計の出発点です。シンプルな 素材 と 形態 それらのエッセンスを感じることのできる内外の適度なスケールが、ミカンやイチジクの果樹、日差しや雨風と相俟って、庭先-ニワサキ-に集う「家・庭の風景」を紡ぎ出す背景となっています。

「成長」という時間の中で、住宅に備わる「緩やかな全体性」と「家・庭の風景」が、コミュニケーションの回復、生活と環境のバランス、まちなみの形成といった包括的な問題を建築デザインの立場から解決する一助となりうると考えています。