住んでよし!こだわりマイハウス
アパートを改装 2階の2世帯分を連結
アパートを住まいに改装することができる。今月、金沢市から白山市に引っ越したばかりの会社員男性は、4世帯が入居できる築21年の木造2階建てアパートを買い取って自宅にした。
空き部屋だった2階の2世帯分を連結して、延べ床面積約87㎡を確保。二つあった玄関は一つにして、4人家族が暮らす一つの住まいに仕上げている。
アパートは正面中央に2階に続く階段があり、1階は2世帯が入居している。妻は「ちょうど2階の2世帯分が空いているアパートが見つかるなど、好条件が重なりました」と話す。
外観には手を加えなかったため、改装に要した工事期間は実質2カ月ほど。費用も一戸建てに比べて、かなり低額に抑えることができたそうである。
設計は、夫婦と面識があった一級建築士の谷重義行さんに依頼した。谷重さんは湿度を調整し、消臭効果のある珪藻土を壁に使うことを提案。施主の希望に沿って、柱の位置と、リビングの広さを両立させることに知恵を絞った。
リビングはダイニングと合わせて22畳分の広さとなった。もともと1世帯分の居住スペースをまるまる充てた格好だ。天井の高さは2.9メートル。アパート時代と比べて0.5メートル高くした。床は大理石調の渋い緑色にした。
仕事の関係で、自宅に知人を招くことが多い。妻は「満足度120%です」と言い切る。
谷重さんは「アパートを自宅として改修したのは今回が初めてです。一戸建て住宅ではなく、アパートを買い取ってリフォームする試みはこれからの時代、面白いと思います」と手応えを感じている。
受賞コメント
石川で活動する多くの建築家の厳しい眼に晒されるこの賞は 他の賞よりもより強い緊張感の伴うもので 大賞に選ばれたことはたいん光栄なことです。私は建築デザインに際して 常に日本の伝統的家屋の持つ空間性を意識しています。陰翳があり 風が吹き抜け 自然の気配が流れる<うち-そと>の曖昧な空間として現れます。空間は内から外へ 庭から風景へと連続し 変化に富む秩序を内在し 建築をひとつの有機的な全体像 つまり環境へと統合します。その統合力が これからの我々の生活や生き方に 大きな役割をはたすものと思っています。
本宮保育園が目指すのは「こころ」と「からだ」の育成です。「小さいけれど多くの人々 多くの生きものとかかわることのできる」ここはそんな保育園です。そして建築は人と共に 地域の自然と社会と共に在ります。①隣接する神社 周囲の自然と競わないフラットな屋根 ②園舎の外周をめぐる犬走りと庇 ③雨雪の日でも遊べる広い三和土(タタキ)の土間 ④木や珪藻土等 ふんだんに用いた能登の建築素材 ⑤環境に配慮した日本の伝統手法と太陽光発電や土壌蓄熱の新しい設備以上の取り組みにより 地域に根差しながら これまでにない空間を提案しています。
受賞コメント
賛助会の方々と一般の市民の方々から 各々の賞を頂きましたことは この住宅の持つ独創性だけではなく 施主の希望する生活スタイルに共感いただいた結果と思います。施主の住まいへのこだわりと設計への理解抜きには実現しえない住宅です。与えられた課題を熱考した上で生まれるオリジナルな建築を目指して これからも努力したいと思います。
これは書棚を中心に本と共に暮らす住宅です。新聞記者である建主には 沢山の書籍を収納する場所を確保し なおかつ全ての本を眺めながら暮らしたいという望みがありました。長さ7m 高さ7m 奥行60cmの書棚を家の中心に配置することで 全てのスペースが棚と面するようになり 家族全員がひとつの棚を共有することになります。所要する棚の範囲は曖昧で 家族は棚を中心に領域を巡りながら暮らします。建築のような家具であり 家具のような建築です。
受賞コメント
今回、公開審査を経て投票が行われ、大賞として選出されたことは、たいへん光栄なことです。また、市民賞にも同時受賞できたことは、これからの活動の励みになります。建築デザインは、建築家個人の恣意的側面も含んでいますが、その多くは至って社会的、文化的であり、我々の生き方、つまり、共に生きる姿に深く関わるものです。本賞の選考プロセスの公開を通して、多くの人に理解いただける機会となることを願っています。
ふたつの住棟を渡り廊下でつないだ二世帯住宅です。親世帯、子世帯の好みに合わせた二つの住宅が、材料、形態、色調によって対比されながらも、適度にとられた外部スペースの間合いと、室内を見通しながら、庭から庭へとつながる場面の連続によって「緩やかな全体性」を確保しています。
小さな農機具小屋に愛着を持つ父親の感性が この設計の出発点です。シンプルな 素材 と 形態 それらのエッセンスを感じることのできる内外の適度なスケールが、ミカンやイチジクの果樹、日差しや雨風と相俟って、庭先-ニワサキ-に集う「家・庭の風景」を紡ぎ出す背景となっています。
「成長」という時間の中で、住宅に備わる「緩やかな全体性」と「家・庭の風景」が、コミュニケーションの回復、生活と環境のバランス、まちなみの形成といった包括的な問題を建築デザインの立場から解決する一助となりうると考えています。
人の内面に作用する空間と「光」
「建築によってつくり出される空間は、人の内面に働きかける強さ、力を備えるべきだ」。石川建築賞、金沢市都市美文化賞などを受賞し、木造建築の構造美で知られる建築家谷重義行さん(谷重義行+建築像景研究室主宰、金沢市)は、建築の空間構成の在り方を、そう提示する。建築の中で、とりわけ宗教的な施設にとって空間の質と内面的なかかわりは一層、重要性を増すに違いない。現在、キリスト教会建築に取り組む谷重さんに、空間へのアプローチを聞いた。
「強さと力を備えた空間が、記憶を共有する開かれた場を生み出す」という谷重さん。人々の記憶に残る魅力的な空間を多く共有することが、活き活きとした生活環境をつくり出すと考えている。教会もその一つである。建築家が教会を造る機会は、そう多くはない。専門の建築設計業者を除いて、生涯にあるかないかだろう。救い、安らぎを求める精神の多面性が凝結する空間。他の建築と異なって、宗教建築は心理的な効果、神聖な祈りの磁場をより強く求めてくる。
この教会で、「祈りのための素朴な空間と人々が集う喜びに満ちた空間」を意識したという。空間が、喜びを生み、精神性の高みへと誘う仕掛けは、天から降り注ぐような光を生みだす高窓の採光にある。
礼拝堂は、屋根を支える三百本の柱がだ円形に並び、骨格を露わにする建築だ。柱の隙間から、時間とともに幾筋もの非日常的な変幻する光が降り注ぐ。柱、梁が壁の内側に隠されることなく現れ、構造体をなぞることで、率直な空間を形づくる。木の繰り返しが生み出す光の質は祈りへと導く。
その空間の強さによって、祈りを基礎とした教会活動は支えられるだろう。「やがてコミュニケーションを誘発し、町の新しい記憶に」と期待する建築に、建築空間のアイデンティティーと、健やかな精神性を常に問い直している。(報道部・黒谷正人)
住民の多くが農業を営む金沢市福増南に、古き日本家屋を思わせる交流館が建っている。40帖の集会室があるものの、長靴を履いたまま土間で立ち話をしたり、縁側に腰掛けたりする人の姿も多く、昔ながらの風景がそこにはある。縁側の高さは車イスに合わせ、段差のないスロープもあり、足が不自由な人でも訪れやすい。土間は広場へるながり、時々子供たちのはしゃぐ声が聞こえる。
屋内から軒先まで延びた梁は、10メートルの木材を3本つなげたものが13列並び、真ん中に膨らみを持たせることで天井が少し高く見えるようにしてある。梁、柱、建具とふんだんに使われた県産材は、あえて見せることで風合いを出している。伝統様式を取り入れつつ、現代的なデザインや機能を盛り込んだ交流館は、地域にしっかりと溶け込んでいくだろう。施工は宮本工務店。
「これまでと同じ施設をつくっても仕方がない。子ども達が自由に楽しく、快適に過ごせるように考えた」と、設計のポイントを説明するのは、金沢めぐみ幼稚園舎で、第24回石川建築賞の優秀賞を受賞した建築家の谷重義行氏。
優秀賞の受賞は2年連続となる。「子ども達が育っていくために、まったく新しい空間をつくりたかった」という。そこで出てきたのが、開放的な遊戯室の吹き抜け空間と、すれに面するすべてかたちの異なる部屋。「各部屋がゆるやかにつながっており、子ども達が思い切り走り回れる。園児達の中に、集中を発散のメリハリが生まれ、自主性が養われてきた」と言われている。
思いがけない発見は、自閉症の子どもが、園舎内では普通に過ごしていること。「たぶん保育室を閉鎖的にせず、自由な出入り口をつくってあるから安心するのでは」と分析する。
「建築をいまのままでいいとは考えない。いまある人の環境の中で、絶えず変わっていくものとしてとらえたい。それが建築と社会の接点になる」と主張する。